第十話 バス代のために、何をしますか?

エチオピアではブンナベッドと呼ばれている売春宿がたくさんあります。

そこで早い子は10歳ぐらいから働く女の子達。

生きて行くために体を売って、相場はどこで働くかにもよるけど、だいたい安くて2ブルから30ブルぐらい。

 

2ブルじゃこっちでも、インジェラも食べれない。バスには4回乗れるけど。

2ブル。日本円で27円ぐらい。

 

売春してHIVになってしまってここに運ばれてくる子達。

ほとんどの子は首都のアディス出身じゃなくて、エチオピアの首都から遠く離れた山岳地帯や村の子達。

出稼ぎのためにアディスに出て来て学校にしっかり行けなかった子がほとんどだから読み書きができないのもあって思うように仕事が見つからなくて、売春宿で働くようになって…。

 

家族がいたとしても電話や住所をもたないから、自分がバス何日か乗り継いで帰らない限り 連絡のとりようもない。

 

帰りたくてもバス代はそう簡単に稼げるお金ではないから。

帰れたとしても、仕事がなくて…。

 

ここに運ばれてきて、 数時間で息を引き取ってしまう子もいる。

「死にたくないよ。恐いよ チャラカ。助けて」って言ってそのまま亡くなっていってしまう子もいる。

「アイズシシ」(大丈夫だよ。安心してね。みたいな意味)って、何回も何回も言って、体をきれいにしてあげて、顔に手をあてたりしばらくそばにいて手を握ってあげて。

私の自己満足かもしれないけど。それでも…って思って。

 

私はここにきて、腸チフス、カイセン、リングワーム、嘔吐、下痢、高熱かかったけど手当て休むことできないから夜とお昼休憩のとき少し横になれる程度だったけど、それでもその瞬間苦しくて、でも私の場合は数日の痛みで終わって、でも患者さんの場合はこの何千倍の苦しみが毎日続いて、いつまで苦しみは続くのか見えなくて。

 

私の様子が少しおかしいって気付いた患者さんに

「チャラカ?どうしたの?大丈夫っ??」

てハグしてもらえるだけで嬉しくてあったかい気持ちになれて。

だから250人以上いた女性の病棟だったけどなるべくみんなの肌に毎日ふれてあげるようにしていました。

 

 

先進国にいたらHIVになっても薬を毎日投与すれば、発症を遅らせること、HIVではない人のように60歳や70歳まで生きれる可能性もかなり高いとのこと。

エチオピアでは、みんな栄養不足でもあるしそんな高価な薬を手にいれることは難しいのが現状です。

 

 

ここの施設に運ばれてくるだけまだ運がよいほうだよ。

みんなたくさん苦しんで、そのまま山の中で死んじゃうもん。

って、ぼそって現地のワーカーの子がいった言葉が悲しかったです。

 

  2007年3月29日 原題「体を売るということ」